• 当選テーマ

2025年度 当選テーマ

第3回となる今回は、32校から88件の応募がありました。応募いただいた皆さまに感謝申し上げます。3名の審査員による審査から10件のテーマを決定いたしました。

当選テーマ名(応募順の記載)・応募者氏名(敬称略)、所属

サステナブルな社会の実現につながるテーマ

3次元海洋モデルFVCOMを活用した大阪湾の流況解析
谷田 裕
(神戸大学大学院 海事科学研究科海事科学専攻 海洋気象研究室)

テーマ概要(クリック)

太陽光駆動型H2O2製造による分散型下水道システムの提案
井手 玲花
(新潟大学大学院 自然科学研究科材料生産システム専攻 無機ナノ材料研究室)

テーマ概要(クリック)

切り紙に着想を得たヒンジ機構による小型デバイス設計・製造技術の革新
杉原 大樹
(早稲田大学大学院 基幹理工学研究科機械科学・航空宇宙専攻 岩瀬研究室)

テーマ概要(クリック)

ライフサイエンスの発展につながるテーマ

中空糸膜を利用したキャピラリーゲル濾過(SEC)法による癌診断法の開発
木﨑 凜夏
(岐阜大学大学院 自然科学技術研究科生命科学・化学専攻 竹森研究室)

テーマ概要(クリック)

ExplorationofBattery-FreeOrganicUVEmittersforPracticalOpticalBiosensing
BOONMONGNUTNICHA
(九州大学大学院 工学府応用化学専攻 窪田研究室)

テーマ概要(クリック)

バッテリレス/センサレスの次世代ヘルスケアに向けた生体バックスキャッタ技術の開発
小玉 美悠
(電気通信大学大学院 情報理工学研究科機械知能システム学専攻 村松研究室)

テーマ概要(クリック)

デジタル技術の発展につながるテーマ

簡易脳波計に基づく感性アナライザによるストレス度計測を用いた空飛ぶクルマの社会受容性の研究
立田 健悟
(名古屋大学大学院 工学研究科マイクロ・ナノ機械理工学専攻 制御システム工学研究グループ)

テーマ概要(クリック)

クリエイティブメンテナンスを目指した維持管理BIMの構築と活用に関する研究
土井 究太
(広島工業大学大学院 工学系研究科環境学専攻 杉田宗研究室)

テーマ概要(クリック)

Mn4N系薄膜を用いたスピントルク発振素子(SpinTorqueOscillator)におけるテラヘルツ帯発振
曽布川 優樹
(筑波大学大学院 数理物質科学研究群応用理工学学位プログラム電子・物理工学サブプログラム 環境半導体・磁性体研究室)

テーマ概要(クリック)

体積ホログラフィック光学素子を用いた微細モーションセンサーの作製
齋藤 陸
(宇都宮大学大学院 地域創生科学研究科工農総合科学専攻 茨田研究室)

テーマ概要(クリック)



審査員より 第3回TRENG Supportを終えて(敬称略)

神永 晉 様

神永 晉

東レ株式会社 社外取締役

コメントを開く(クリック)

 今回寄せられた多数の論文は、サステナブルな社会の実現、ライフサイエンスの発展、デジタル技術の進化等を中心として、多岐にわたる分野に展開されており、現在の状況を踏まえた上で、将来の可能性を“追究”しようとする意欲に満ちたものが多く見られました。研究を進める上では、社会の要請を常に敏感に感じ取るアンテナの感度を研ぎ澄ますとともに、短期志向でなく将来を見据えた時間軸と、日本国内のみならず広く世界に目を向けた空間軸を意識しながら、工学を駆使してその威力を十二分に発揮することが肝要と思います。


竹内 佐和子 様

竹内 佐和子

東京音楽大学 特任教授、東レエンジニアリング株式会社 技術顧問

コメントを開く(クリック)

 今年は応募分野が広がり、ナノレベルの細胞や材料などの基礎研究のテーマに加え、上下水道システム、港湾インフラの老朽化、大阪湾の環境悪化、さらに生活の中の音環境や心の病など、新しいテーマが加わりました。新技術をどう受容するかという観点も浮上し、不安感や恐怖感、当事者にしかわからない精神的苦痛など、心理学や脳科学を求める課題も登場しています。今後も社会ニーズの掘り下げ、研究方法、出口戦略をしっかり意識した応募を期待します。工学の守備範囲の広がりに対応した新しい評価基準も作っていきたいですね。


黒田 秀樹 様

黒田 秀樹

CMディレクター、信州大学 特任教授

コメントを開く(クリック)

「虚実皮膜(きょじつひまく)」という言葉が浮かびました。「芸の真実は、事実(実)と虚構(虚)の間の微妙な部分(皮膜)にある」とする近松門左衛門の芸術論です。日々の研究室での葛藤(実)と、目指す高い理想(虚)。そして向き合うプロセスで授けられるひらめきや偶発的報酬が皮膜(成果)です。広告制作の際に座右の銘としているのですが、工学研究にも通じる極意だと感じました。虚実の絶妙なバランスのなかで見つけた研究成果には迫力があります。課題山積のインフラ対処法、ヘルスケアへの新提案、次世代デバイス、など、期待感が満載でした。


2025年12月12日付け日刊工業新聞6面「第3回 修士研究応援 TRENG Support」 ダウンロード

併せて2025年10月15日付け[プレスリリース]工学系大学院での研究を応援する取り組み「TRENG Support」の当選者を決定もご覧ください。

閉じる

3次元海洋モデルFVCOMを活用した大阪湾の流況解析
谷田 裕
(神戸大学大学院 海事科学研究科海事科学専攻 海洋気象研究室)
 海洋物理モデル「FVCOM」の解析環境を大阪湾の海水循環シミュレーションに適用するため、解析結果と実測値を比較。精度評価とモデルの最適化に取り組む。FVCOMを活用し大阪湾の立体的な循環構造を明らかにすることで、良好な漁場を把握・調査できるようになる。また海難事故時の流出燃料や、海洋ごみの経路、収束域を推定し、回収作業の効率化、環境影響評価に役立てられる。

閉じる

太陽光駆動型H2O2製造による分散型下水道システムの提案
井手 玲花
(新潟大学大学院 自然科学研究科材料生産システム専攻 無機ナノ材料研究室)
 光アノードで水を酸化して電子を取り出し、この電子を用いて光カソードで酸素を還元してH2O2を生成する太陽光駆動型H2O2製造装置を開発。このH2O2で廃水を消毒し、下水本管内での硫化水素の発生を抑えて管の腐食を緩和する。電極材料には有機高分子を採用し、低環境負荷、高選択制、低コストを実現。下水管の腐食による道路陥没事故などの抑止や、インフラ維持コストの削減に寄与する。

閉じる

切り紙に着想を得たヒンジ機構による小型デバイス設計・製造技術の革新
杉原 大樹
(早稲田大学大学院 基幹理工学研究科機械科学・航空宇宙専攻 岩瀬研究室)
 「切り紙(Kirigami)」の手法を応用し、シート材料から引っ張るだけで立体的なヒンジとして機能する「切り紙ヒンジ」を創出する。ヒンジの動きを制御する力学モデルを構築し、試作を通じて基盤技術を確立する。研究3年目には集光ミラーアレイ、アンテナアレイなどの応用デバイスを製作し、技術の有効性を示す計画。従来の設計・製造手法を覆す、新しい価値の提供を目指す。

閉じる

中空糸膜を利用したキャピラリーゲル濾過(SEC)法による癌診断法の開発
木﨑 凜夏
(岐阜大学大学院 自然科学技術研究科生命科学・化学専攻 竹森研究室)
 中空糸膜とゲル濾過クロマトグラフィー(SEC)を同時に利用し、1ミリリットル程度の血液から、がん細胞が放出する細胞外小胞(EVs)を直接、濃縮・検出する技術を確立。EVsに親和性があり、服用できる天然蛍光物質と組み合わせて、安価で正確に素早く、がんを検出する方法を構築する。10分程度の解析を目指し、将来、健康診断でもがん検診を実施できる社会を実現する

閉じる

ExplorationofBattery-FreeOrganicUVEmittersforPracticalOpticalBiosensing
BOONMONGNUTNICHA
(九州大学大学院 工学府応用化学専攻 窪田研究室)
 フォトン・アップコンバージョン(UC)の特性を持つ有機材料を用い、低強度の可視光を集中型紫外線に変換。紫外線をバイオセンサー内の励起光源として、蛍光標識されたバイオマーカーの検出を試みる。全有機、バッテリーフリーなバイオセンシングを実現し、環境廃棄物の削減と省エネルギーに貢献する。低コスト化を進め、医療を手頃な価格で利用できる未来の構築を目指す。

閉じる

バッテリレス/センサレスの次世代ヘルスケアに向けた生体バックスキャッタ技術の開発
小玉 美悠
(電気通信大学大学院 情報理工学研究科機械知能システム学専攻 村松研究室)
 生活習慣病の増加を背景に、ウェアラブル/インプランタブル機器を用いたヘルスケアが予防医療の要として期待されている。本研究では、生体内環境を反映した電磁波の応答に基づいて情報通信と生体計測を融合する「生体バックスキャッタ技術」の開発を目指す。同技術は機器のバッテリレス化とセンサレス化を両立し、ユーザに負担のない24時間365日の継続ヘルスケアを実現できる。

閉じる

簡易脳波計に基づく感性アナライザによるストレス度計測を用いた空飛ぶクルマの社会受容性の研究
立田 健悟
(名古屋大学大学院 工学研究科マイクロ・ナノ機械理工学専攻 制御システム工学研究グループ)
 ストレスや興奮などをリアルタイムに計測できる感性アナライザとヘッドマウントディスプレイを用い、調査対象者に臨場感のある空飛ぶクルマの飛行映像を見せて感性値を計測。無意識の感性データまで定量的に可視化し、次世代モビリティの社会受容性を評価する。社会に配慮した実装のあり方を示せるほか、さまざまな新技術の社会実装を加速する受容性評価ビジネスの展開が可能になる。

閉じる

クリエイティブメンテナンスを目指した維持管理BIMの構築と活用に関する研究
土井 究太
(広島工業大学大学院 工学系研究科環境学専攻 杉田宗研究室)
 BIMなどのデジタル技術を活用し、建物の維持管理の品質向上を図る。メンテナンスに関する情報を確認しながら設計できる「メンテナンス指向デザイン」の仕組みを構築するほか、ロボットを活用する「デジタルメンテナンス」、メンテナンスの専門技術者以外が参加する「シェアリングメンテナンス」を実現。人手不足などの社会課題に対応する次世代メンテナンスの確立を目指す。

閉じる

Mn4N系薄膜を用いたスピントルク発振素子(SpinTorqueOscillator)におけるテラヘルツ帯発振
曽布川 優樹
(筑波大学大学院 数理物質科学研究群応用理工学学位プログラム電子・物理工学サブプログラム 環境半導体・磁性体研究室)
 電子スピンで磁化を発振させる「スピントルク発振素子」の動作周波数の向上を目指し、Mn4Nとプラチナ(Pt)の2層膜に着目。膜構造を最適化したうえで、微細化に適した素子を試作、発振特性を評価する。さらに、磁化がゼロとなる磁化補償を利用し、発振周波数の一層の向上を図る。テラヘルツ発振素子は、次世代通信技術「Beyond5G」の実現を後押しする。

閉じる

体積ホログラフィック光学素子を用いた微細モーションセンサーの作製
齋藤 陸
(宇都宮大学大学院 地域創生科学研究科工農総合科学専攻 茨田研究室)
 フォトポリマーを感光材料とする体積ホログラフィック光学素子に複数の光を照射。素子の移動によって内部の光に生じる回折光の周波数差を記録、解析して素子の移動速度を算出し、微細動作を高精度に検知するモーションセンサーを作る。人の動きをより正確に計測・再現することで、仮想空間での学習や体験の質向上と、知識・技能の保存・共有する社会の構築に貢献する。